まさか自分の家に、という言葉を、これほど身をもって実感した日はありません。それは去年の夏のことでした。寝室で寝ていると、夜中に天井から「ブーン」という低い羽音のようなものが聞こえるようになったのです。最初はエアコンの音か、あるいは外の音だろうと気にも留めていませんでした。しかし、その音は日を追うごとに大きくなり、ついには「カリカリ、ガリガリ」と何かを削るような音まで混じるようになりました。さすがにこれはおかしい。不安に駆られた私は、家の周りを点検してみました。そして、二階の寝室のすぐ外壁にある換気口に、恐ろしい光景を見つけてしまったのです。黄色と黒の縞模様の、明らかにスズメバチと分かる蜂が、ひっきりなしに出入りしているではありませんか。あの天井からの音は、彼らが天井裏で巣を拡張している音だったのです。その瞬間、全身の血の気が引きました。家の中にいるのに、全く安全ではない。寝ている間に、天井を突き破って部屋に侵入してくるのではないか。そんな恐怖で、夜もまともに眠れなくなりました。私はすぐにインターネットで専門の駆除業者を探し、震える手で電話をかけました。事情を話すと、すぐに現地調査に来てくれることになり、翌日、防護服に身を包んだプロの方が到着しました。点検口から天井裏を覗いた業者の人は、静かに「かなり大きいですね」と一言。見積もりと作業内容の説明を受け、その日のうちの駆除をお願いしました。作業中、私はただ息を殺して階下で待つことしかできませんでした。やがて、作業を終えた業者の方に呼ばれ、見せられたのは、巨大なビニール袋に収められた、信じられないほど大きなマーブル模様の塊でした。直径は五十センチはあったでしょう。これが、毎晩私の頭上で成長していたのかと思うと、改めて身がすくむ思いでした。この経験は、蜂の巣の脅威は決して他人事ではないこと、そして異変を感じたらすぐに行動することの重要性を、私の心に深く刻み込んだのです。